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 シングル「Automatic」で、日本の音楽シーンに鮮烈なデビューを果たした、日本を代表する女性シンガー。作品を出すごとに評価される音楽センスとヴォーカリストとしての実力で、常に日本の音楽シーンをもり立てる。

Discography

1999
First Love 1st
2001
Distance 2nd
2002
DEEP RIVER 3rd
2006
ULTRA BLUE 4th
2008
HEART STATION 5th
ULTRA BLUE
ULTRA BLUE
1.This Is Love
2.Keep Tryin'
3.BLUE
4.日曜の朝
5.Making Love
6.誰かの願いが叶うころ
7.COLORS
8.One Night Magic
9.海路
10.WINGS
11.Be My Last
12.Eclipse (Interlude)
13.Passion
06年発表
 宇多田ヒカルの4thアルバム。03年発表のFから、本作リリース直前に出されたAまで、収録曲のリリース時期にばらつきがあり、本作に収録されているそれらのシングルは5曲に及ぶ。一瞬、その長い期間にできた曲の寄せ集めのような作品なのかと気になってしまったが、その悩みも杞憂に終わらせるほどに素晴らしい内容。振り返ってみれば04年には海外で作品をリリースし、はたまた日本では映画のタイアップもあった・・・。このアルバムの製作期間中に活動範囲が広がったことで、心境に少なからず変化が起こっていたのは間違いない。本作は、長い期間に得た音楽センスを結集させた作品である。

 そもそもシングル5曲の出来が良く、タイアップの@も含めれば、殆どの人にとって半分ほど既に聴いたことのある曲がアルバムを占める。なので、すんなりと聴くことが出来るのも本作の魅力の一つ。シュールさのあるAと、ゲームのテーマ曲Lは、別世界に連れていかれるような幻想的な空間が生み出されており、特に完成度の高さが伺える。・・・それにしても今回の作品は、過去の作品と比べると、全体的に冷ややかな音を使った美しい楽曲が多い。単純に"良い曲"と思って聴いていた過去の曲と比べると、曲にいろんな意味で"重み"が増している気がする。ただならぬ雰囲気や緊張感が全体に漂っていると感じる。

 シングル以外では、アルバムの軸となっているというBや、個人的に本作のベストトラックのCは聴き所。Cは派手さはないが、淡々と進むリズムと浮き沈みのある展開が癖になる、隠れた名曲。作品を出す度にに高い評価を受ける宇多田ヒカルは、今のポップス界では違う方向に枝分かれしながらも、今後も音楽シーンを支えてくれる存在となっていくに違いない。
HEART STATION
1.Fight The Blues
2.HEART STATION
3.Beautiful World
4.Flavor of Life (Ballad Version)
5.Stay Gold
6.Kiss & Cry
7.Gentle Beast Interlude
8.Celebrate
9.Prisoner of Love
10.テイク 5
11.ぼくはくま
12.虹色バス
13.Flavor of Life (Bonus Track)
08年発表
 前作「ULTRA BLUE」から約二年の期間を経てのリリースとなった、5枚目のオリジナルアルバム。デビューしてから年々増している宇多田ヒカルの安定感と存在感を、前作以上に感じさせた作品。やりたいことをやりながらもキャッチーにまとめてくる完成度の高さに、相変わらず感心させられた。このアルバムには、映画"エヴァンゲリオン"の主題歌「Beautiful World」や、ドラマの主題歌「Prisoner of Love」など大きなタイアップが存在するが、これをきっかけに宇多田ヒカルの存在が世間に再認識されたのではないだろうか。再評価と言っては大げさだが、CMのタイアップも含め世間に彼女の楽曲が終始流れている環境が生まれたのは良かった。

 自由奔放な彼女の歌声やコーラスに惹かれるのは当然だが、細かいことを抜きにして単純にサウンドが気持ちいい。透き通るような美声とともに、技巧の凝らされた近代的なメロディ・アレンジで、クリスタルのような輝きを魅せる。中でも2#「Heart Station」の、辺りを覆うかのようなシンセの音がたまらなく心地良いし、#6「Kiss&Cry」のコミカルな音の使い方は、他のアーティストには真似できない芸当だろう。名曲#3「Beautiful World」はタイアップを意識してか、大きなプレッシャーの中で作られたそうだが、その気概が伝わる素晴らしい曲に仕上がっている。全体的に前作同様、緊張感が漂う作品に仕上がっているが、後半に#11「ぼくはくま」、#12「虹色バス」といった肩の力が抜けた微笑ましい楽曲が配置され、締められていく。

 前作から作風が変わり、宇多田ヒカルのセンスの良さと引き出しの多さに驚いたが、才能の枯渇を感じさせない本作にも、ある意味驚かされた。R&Bは薄くなり、曲の質を重視した作品なので、サビだけで良し悪しが分かるような作品ではない。そういう意味で、前作が好きな方は間違いなくハマると思う。現時点での彼女の代表作として自信を持っておすすめできるアルバム。