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Supergrassは95年のブリッドポップ全盛期にデビューしたバンド。グランジバンドを見下すように元気な楽曲、若いながらとても卓越した音楽センスが人気を呼び、たちまちチャートを賑わす存在となった。それからというもの勢いは衰えず、アルバムごとに音楽性を大きく変えつつ、質の高いポップな良作を作りあげてきた。ブリッドポップの数少ない生き残りであり、現在も尚、UKを代表するバンドとして活躍している。
Discography
1995 |
I Should Coco |
1st |
1997 |
In It for the Money |
2nd |
1999 |
Supergrass |
3rd |
2002 |
Life on Other Planets |
4th |
2005 |
Road to Rouen |
5th |
2008 |
Diamond Hoo Ha |
6th |
I Should Coco
1.I'd Like to Know
2.Caught by the Fuzz
3.Mansize Rooster
4.Alright
5.Lose It
6.Lenny
7.Strange Ones |
8.Sitting up Straight
9.She's So Loose
10.We're Not Supposed To
11.Time
12.Sofa (Of My Lethargy)
13.Time to Go |
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95年発表
Supergrssのデビュー作。ブリッドポップ全盛期に突如現れ、イギリスを中心に大ヒット。一作目にして完成された楽曲群。それぞれのパートが主張しあうかのような力強い演奏も聴き応えがある。なにより若々しくて元気いっぱいの作品を聴けば微笑まずにはいられない。疾走感のあるデビュー曲Aや大ヒット曲Cはそれを象徴するような曲。
とはいえ、ただ元気なだけではなく、後半ではストリングスを用いた「聴かせる」ナンバーを持ってきたりして、振り幅も大きい。ホントに良い曲を作るよなぁ、と改めて感心。
In It for the Money
1.In It for the Money
2.Richard III
3.Tonight
4.Late in the Day
5.G-Song
6.Sun Hits the Sky |
7.Going Out
8.It's Not Me
9.Cheapskate
10.You Can See Me
11.Hollow Little Reign
12.Sometimes I Make You Sad |
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97年発表
Supergrssの2ndアルバム。UKロック界に新風を巻き込む衝撃的なデビューを果たし、たちまち人気を獲得した彼ら。今回は前作のパワフルなバンドサウンドを継承しつつも様々な楽器の音色を幅広く織り交ぜ、バンドの懐の広さを世に知らしめた作品。これは本作から本格的に参加しているKeyboadのロブによる貢献が大きいようである。前作のパンキッシュで荒けずりだった部分が極力排除されたことで音がシャープになっているもポイント。地道ではあるが、着実に成長しているというのが見て取れる内容となった。
前述通り、本作から様々な楽器が取り入れられているということもあり、とてもバラエティに富んだ楽曲が揃っている。@とAでは力強い演奏とともにダークな一面を見せており、Bはジャズテイストを含んだにぎやかな曲に仕上がっている。真夏のビーチを駆け回るようなEは1stとのつながりを大いに感じさせる曲で、個人的に特に好きな楽曲。などなど挙げていけばきりが無いが、シングルカットされたACEは人気の高い楽曲なので是非聴いてもらいたい。
明るく振舞っていた前作と比べるとやや落ち着いた印象を持つのだが、後に出される作品に比べればまだまだ元気で若々しい。渋いサウンド選びをし始めた本作は後の作品との繋がりを強く感じさせる。次作はベテランバンドのような渋いアルバムとなるので、本作は簡潔に言ってしまえば1stと3rdの中間的なサウンドと言える。
Supergrass
1.Moving
2.Your Love
3.What Went Wrong (In Your Head)
4.Beautiful People
5.Shotover Hill
6.Eon |
7.Mary
8.Jesus Came from Outta Space
9.Pumping on Your Stereo
10.Born Again
11.Far Away
12.Mama & Papa |
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99年発表
Supergrassの3rdアルバム。デビュー当時の転びそうな勢いは前作以上に抑えられ、それによる大胆なイメージチェンジが話題となった作品。前作と比べると変化の大きさに驚くが、思わず手拍子したくなるようなノリの良さは失われていない。荒い部分を極端に抑えつつストリングスを強調させたことによって渋みが増し、精神的に大人になったことを公に発表したような作品。ギャズのヴォーカルについても、いつも以上に声色がよく変化する印象も受ける。彼らの職人的な音作りが顕著に現れており、音楽性の高さも知らしめることができた作品と言える。
本作はファンにとても人気のある@が収録されている。曲調がガラリと変わるのが印象的な名曲だ。他にも深化を感じさせる作りこまれた楽曲が揃っており、捨て曲は無いと言ってもいい。成熟を感じさせる内容とはいえ、前述通り若さを忘れないノリの良さがしっかり残されている。これがとても良かった。特にHに至っては体をくねらせて踊りたくなるほどである。と言いつつも、後半は単音のメロディーが染みるまさに渋い楽曲が揃っており、アルバム全体の完成度は高いといえるだろう。
アルバムの全体的な雰囲気としては、爽やかな風を感じるとても涼しげな作品という感じである。そのため、夏場に窓を全開にしたリビングでカーテンがはためく姿がとても良く似合う。楽曲のポップセンスも相変わらず素晴らしい。この作品が発表された当時はブリッドポップの勢いが既に沈静化していたものの、個人的に本作はスーパーグラスのポップセンスとサウンドクオリティが合致した最高傑作、と言えるアルバムである。
Road to Rouen
1.Tales of Endurance, Pts.4, 5 & 6
2.St. Petersburg
3.Sad Girl
4.Roxy
5.Coffee in the Pot
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6.Road to Rouen
7.Kick in the Teeth
8.Low C
9.Fin |
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05年発表
Supergrssの5thアルバム。彼らはこのアルバムの制作時、身内の死やスワッピング騒動などトラブルが相次いでおり、そのことが彼らの心境に少なからず影響を与えたのだろうか。本作はアコースティックなサウンドが目立つ非常に内省的な作品となり、ファンを驚かせることとなった。デビューしてから現在までに様々な音楽性を取り入れ、アルバムをリリースする度にリスナー驚かせてきたが、今回のアルバムについては彼らにとっても最も大きな変化だったのではないだろうか。
デビュー当時の特徴でもあった元気いっぱいなサウンドはもはや皆無で、ストリングスを前面に押し出したクラシカルな楽曲がとにかく印象的である。上品で落ち着いた雰囲気を醸しだす楽曲からは、イギリス人特有の素晴らしい音楽センスを感じるとともに、バンドの成熟具合をも窺い知ることが出来る。そして最終的には、西洋の町並みが頭に出てきたり、木造のカフェの店内で演奏している様を想像させる。英国の風を音に乗せて運んできてくれた作品、とは言えないだろうか。
トラック数は9曲と少なく、時間にして約35分。コンパクトに纏まっている性質上、とてもあっさりと聴けてしまえるが、どの楽曲も所謂スルメのような味わい深い曲ばかりなため、人によってはとても永く付き合っていける作品。3rd収録の「Moving」を彷彿とさせる大胆な曲展開が印象的な@と、ピアノとアコースティックなサウンドでゆったり聴かせるAは文句なしの名曲。
地味な印象が強いため、初めてスーパーグラスを聴く人にはおススメできないが、苦肉の末に作り上げた名作であるのは間違いない。彼らが活動10周年にしてようやくたどり着いた新境地は、とても大人びたものであった。それにしても渋すぎる(笑)。