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 英国のカリスマヴォーカリスト、ブレット・アンダーソンを中心としたロックバンド。デビュー時からブレットの言動を含めて話題になり、デビュー作『Suede』のヒットでたちまちブレイクする。

 Suedeが展開する音楽は、The Smitsなどから影響を受けた、ダークでグラマラスな英国ロックが基盤にある。しかも、華のあるヴォーカル(ブレット・アンダーソン)に寡黙なギタリスト(バーナード・バトラー)という組み合わせは、まさにモリッシーとジョニー・マーのコンビを彷彿とさせる。

 バーナードの脱退などで一時期低迷するものの、ポップ路線を極めた三作目『Coming Up』は、デビュー時を超えるほどのヒット作となった。 しかし現在は活動を休止している。その後、不仲だったブレットとバーナードが和解し、ユニットを結成するもこちらも休止中。・・・現在は各々がソロ活動中。

Discography

1993
Suede 1st
1994
Dog Man Star 2nd
1996
Coming Up 3rd
1997
Sci-Fi Lullabies rare tracks
1999
Head Music 4th
2002
New Morning 5th
Coming Up
1.Trash
2.Film Star
3.Lazy
4.By the Sea
5.She
6.Beautiful Ones
7.Starcrazy
8.Picnic by the Motorway
9.The Chemistry Between Us
10.Saturday Night
11.Young Men *
96年発表
 前作の完成間際に突如脱退してしまったバーナード・バトラー。本作は、大半の作曲に加え、サウンドの中軸をも担っていた彼が不在という逆境の中で制作された3rdアルバム。当然バーナードの抜けた穴いうのは大きく、バンドの存続を危うくさせるほどの危機であったと同時に、たちまち解散説が囁かれるようになったのもしかたない。しかしバンドはその後、新たに17歳のギタリストとキーボード奏者を加えて五人編成となり心機一転し、再起を図るべくこのアルバムを作りあげた。デビューしてからグラムロック譲りの妖艶なイメージがついていた彼らだが、この作品では@に代表される、英国の良質な空気をたっぷり吸い込んだ極めてポップな音作りが徹底されている。艶のあるギターサウンドにもギラギラとした力強さが出ており、この作品を最高水準へと押し上げている。結果としてバンドはデビュー時以上の成功を収めることとなったのである。

 本作では、ブレットの中性的なヴォーカルはそのままに、ノリの良い明るいロックサウンドが次々と飛び出す。当然ブレッドもそれに合わせてノリノリで歌うので、影が纏わり付くような妖しい雰囲気は吹き飛んでいる。大ヒットシングル@のほか、パワフルなサウンドがとてもストレートに表現されているAFなどは、ファンの間で人気の高い楽曲で、これらは本作だからこそ披露できた曲と言えよう。

 この作品からキーボード奏者を加えたことが音楽性を広げたのか、様々なタイプの曲が混在している印象を受ける。にもかかわらず、乱雑なイメージが全く無く、それぞれの楽曲がスウェードのカラーを打ち出し、バラエティ豊かに仕上がっている。それは、デビュー当時から既にスウェードの個性が確立していたからこそできたのだろう。それを失わず、厚みや歪みの効いたギターサウンドや明るい雰囲気に、食虫植物のような毒々しさがしっかりと組み込まれているのは、見事と言わざるを得ない。

 それにしてもポップな路線にシフトした途端、すぐにその才が発揮できたのは流石。ブレッドや新加入したメンバーのポップセンスの高さを早速伺わせる内容となった。こっちの路線の方がこのバンドは向いているのかもしれない…、そう感じたファンも少なくないはずだ。どれをシングルカットしても良いと思えるほどの完成度を誇る、起死回生の快作。あとは好みの問題だけど。
Head Music
1.Electricity
2.Savoir Faire
3.Can't Get Enough
4.Everything Will Flow
5.Down
6.She's in Fashion
7.Asbestos
8.Head Music
9.Elephant Man
10.Hi-Fi
11.Indian Strings
12.He's Gone
13.Crack in the Union Jack
99年発表
 Suedeの4thアルバム。前作『Coming Up』で大成功を収め、ロックシーンにおいて確固たる地位を築くこととなった彼ら。本作は、基本的に前作のポップな作風を継承した作品となり、結果的に全英一位を記録。人気の高さを裏付けたアルバムである。しかしその好セールスとは裏腹に、スエードのディスコグラフィの中では地味な立ち位置の作品でもある。本作においては初期の刺々しさがほとんどなくなり、垢抜けたと言えるほどの綺羅びやかなロックサウンドを、リスナーに叩き込むかのように繰り広げる。

 前作の延長線上に位置しながらも、打ち込みの音を随所に組み込み、グルーヴ感を重視した本作。よりダイナミックになったバンド・サウンドや、突き抜けるようなポップミュージックからは、暗い部屋で佇んでいたような初期のネクラっぽさは微塵も感じられなくなった。それは、メインストリームを大手を振って闊歩するような堂々たる雰囲気を放ち、大物の貫禄をにじみ出している。甲高いギターをサイケデリックに掻き鳴らす#1「Electricity」は、力技でねじ伏せるかのようなかっこ良さとポップさを持った名曲。悲壮感漂うオシャレな#4「Everything Will Flow」や#6「She's In Fashion」の、純粋さすら感じさせる壮大なミドルナンバーは、本作ならではの楽曲といえるだろう。

 本作の内容は決して悪くない。しかし、本作辺りから彼らの評価が早くもぐらつき始めることとなる。原因はやはり初期と後期での音楽性の違いにより、リスナーとの間に大きな隔たりが出来たからなのだろうか。バーナード・バトラーが抜けた後のスエード(後期)も勿論魅力的だが、彼らの真の魅力は初期であると感じる人は未だに多い。それにあんなに妖しくて刺々しかったのに、スタジアムロックばりのメインストリームに行ってしまったことで、リスナーが置いてけぼりを食らってしまったというのもあるだろう。しかし、ブレッド・アンダーソンの妖艶な魅力は衰えていないし、大胆な改革によって過去と決別する思い切りの良さには、こだわりすら感じる。本作は、過去と決別し高みを目指して作られた意欲作といえるだろう。