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ポストパンクバンドJoy Divisionとしてシーンで活躍していた彼らだが、「Croser」製作後ヴォーカルのイアンカーティスが自殺。その後ギターだったバーニーがVo&Gを担当するという形で新たにスタートしたのがこのNew Orderである。1stこそJoy Divisionやイアンなどの過去を引きずったような出来だったが、2ndから打ち込みやシンセサイザーを大きく取り入れたサウンドでシーンを圧巻。この時期に大ヒットしたBlue Mondayで彼らは過去を払拭し、一気にメインストリームに躍り出たと言える。

演奏の下手さはよく言われていることで、特にバーニーの音痴さには定評があるらしい(笑)。しかし、声色やその冷めたような歌い方が奇跡的にサウンドに解け込んでいるのも事実で、とても渋みの利いたヴォーカルを披露している。因みに、フッキーの高らかに鳴るベースは当時とても印象的だったもので、彼に影響されたベーシストは多いという。

チープで無機質なサウンドを無表情で演奏する彼らは不気味でもあるが、憂鬱になるメロディとダンサブルなビートが結びついた楽曲がイギリス中に鬱の種をばら撒いた、と言っても過言ではないはず。

Discography

1981
Movement 1st
1983
Power, Corruption and Lies 2nd
1985
Low-Life 3rd
1986
Brotherhood 4th
1987
Substance best
1989
Technique 5th
1993
Republic 6th
2001
Get Ready 7th
2005
Waiting For The Sirens' Call 8th
Low-Life
Low-Life
1.Love Vigilantes
2.The Perfect Kiss
3.This Time of Night
4.Sunrise
5.Elegia [Instrumental]
6.Sooner Than You Think
7.Subculture
8.Face Up
85年発表
New Orderの3rdアルバム。前作にてピコピコの打ち込みサウンドを取り入れた独自の音楽性を発揮したバンドは、本作にてそのサウンドの方向性を確立させて突き止めていった印象を受ける。それに加えてNew Order(というよりはJoy Division)を印象付ける、地を這うような暗いオーラを纏った楽曲が中心に並べられていることで、彼らを知る上での名刺代わりの一枚となった作品といえるだろう。

個人的にたまらなかったのがインストのD。本作の中で最も沈み込む曲で、なにか不気味な絵画から呪いをかけられているような気味悪さを持ちつつも非常に奇麗な音色で構成された名曲。アルバムの前半の流れの良さも相まってか、この曲だけは別格だった。この作品から初めてシングル曲を入れてきたのも印象的な作品だが、10分ほどの大作のはずだったAをわずか5分弱でまとめてしまったのは残念だった。長いバージョンがあまりに素晴らしかっただけに、試作品を聴いてる感が否めなかった。それでもアルバムの色や流れに合わせるためには仕方なかったのかもしれないが。

一曲目こそまだ日の光を受けている明るい印象があるが、以降トラックが進むにつれてどんどん光が遮断されて闇に覆われていくこの構成はやはり不気味であり、孤独感を味わわされる。しかしこの不気味な"部屋"の中で綺麗なシンセの音を落とした楽曲群には、美しさの中からこみ上げてくる恐ろしい絵画をやはり見ているような心境にさせるものがある。そのような雰囲気から、個人的に本作は一昔前の西洋文化の匂いを感じさせる作品ともいえる。
Substance
Substance
Disc 1
1.Ceremony
2.Everything's Gone Green
3.Temptation
4.Blue Monday
5.Confusion
6.Thieves Like Us
7.Perfect Kiss
8.Subculture
9.Shellshock
10.State of the Nation
11.Bizarre Love Triangle
12.True Faith
Disc 2
1.In a Lonely Place
2.Procession
3.Mesh
4.Hurt
5.Beach
6.Confusion Instrumental
7.Lonesome Tonight
8.Murder
9.Thieves Like Us Instrumental
10.Kiss of Death
11.Shame of the Nation
12.1963
87年発表
New Orderのベストアルバム。Disc1にはシングルが、Disc2にはシングルのB面トラックが収録されている。シングルコレクション+αではあるが、彼等の発表したシングルのほとんどはアルバムに収録されていないのでこのベストアルバムの音源は、New Orderを知る上で重要なモノである。そしてこの作品については、オリジナルアルバムと位置づけても良さそうだ。曲は発表順に収録されており、Joy Division時代を引きずったポストパンク系統の楽曲から、打ち込みやシンセによるサウンドを主体にしていく過程がとても自然なことが、このベストを聴いてもらえれば分かるはず。

特筆すべきは(D1)B〜F。彼等の全盛期であるとともに人気の高い楽曲が並んでいる。(D1)Cは故・イアンカーティスを歌ったもので、メンバーが彼の死を月曜日に知ったことに由来する。チープで無機質なシンセの音が様々な音色を奏でるこの楽曲は、New Orderの大ヒット曲となった。このアルバムのために作られたという(D1)Kは個人的にNew Orderのベストトラック。出ているサウンドのすべてから負のオーラを感じるとても切ないナンバー。B面集のDisc2はDisc1のリミックスやインスト、隠れた名曲が多く、見逃すことが出来ない。特に(D2)Kに至っては隠れすぎた名曲と言ったところ。

New Orderの入門として、是非とも粒ぞろいのこの作品を手に取ってもらいたい。
Technique
Technique
1.Fine Time
2.All the Way
3.Love Less
4.Round & Round
5.Guilty Partner
6.Run
7.Mr. Disco
8.Vanishing Point
9.Dream Attack
89年発表
New Orderの5thアルバム。87年にベストアルバムを発表し、バンドは大きな節目を迎えていた。それを尻目に時はアシッドハウス、マンチェスターブームも迎えるのだが、世代交代が行われつつある音楽シーンの中で、彼らが一つの到達点を示したのがこの作品だと個人的に思っている。ニューオーダーで活動を続けるうちに陰鬱なエレクトロポップを突き詰めていくようになったバンドにとって、当時のブームは独自の音楽性と共鳴するところがあったに間違いない。そう感じさせるほど、サウンドが今まで以上に生き生きしている。

この作品がアシッドハウス音楽の聖地、イビザ島で録音されたことは有名で、その影響かハウス色が強く、ダンスミュージックの雰囲気が色濃く出た作品となっている。特に@はそれを体現しており、音がスピーカーの左右を激しくピンポンする、非常にダンサブルな一曲。因みにこの曲はシングルカットもされた。同様の雰囲気を持つCもシングルカットされたということで、そこからもバンドの示したい音楽性を想像することができる。そういった作風が影響してか本作は、以前までの作品ほどは落ち込んではいない。確かにダウナーな空気を醸し出してはいるものの、どの曲からも明るい兆しを感じさせる。BとEに至っては励まされているような気分にさせられるほどである。

ため息をつくような暗い雰囲気の中をエレクトロビートと女性のコーラスが切り開こうとするF、シンセの音が儚くも美しいGは個人的に特にお気に入り。Aは疾走するギターサウンドと間奏のシンセの音が印象的な疾走ナンバーで、音のつくりが他の曲とは異質だが、雰囲気はぴったり。
前述の通り本作は、独自のエレクトロポップが一つの臨界点に達し、それをリスナーに確信させた傑作と言えるだろう。
Get Ready
Get Ready
1.Crystal
2.60 Miles an Hour
3.Turn My Way
4.Vicious Streak
5.Primitive Notion
6.Slow Jam
7.Rock the Shack
8.Someone Like You
9.Close Range
10.Run Wild
01年発表
New Orderの7thアルバム。前作から約8年ぶりとなった彼らの新作。無理やりテンションを上げているような派手なサウンドアレンジや大胆に取り入れられたギター、それらにかぶさるエレクトロニックなサウンドを聴くと、彼らは常に若々しいなあと改めて思う。と同時に本作は、Joy Division時代を思い起こさせる作品ともなっている。ただ、初期のような安っぽいサウンドではなく、エレクトロニカのような風通しの良いシンセがさりげなく乗っかっているため、現代に帰還した新たなJoy Divisionとも言える。

ド派手なサウンドが飛び交うヒット曲@は、自身の復活を祝うかのようにテンションの高い楽曲で、その後のトラックもそれに続けとばかりにどんどん力強いサウンドが飛び出してくる。プライマルスクリーム参加のFや、 スマパンのビリー参加のBなど、ニューオーダーに影響されたアーティストによるコラボ曲も必聴。因みにFはプライマルスクリームの「Xtmntr」に収録されているShoot Speedのリフを引用した曲である。

ニューオーダーはこのアルバムのヒットで多くの若者からの支持を集め、フジロック出演で来日も果たした。初期からのファンには受け入れ難い作品かもしれないが、常に先進的なサウンドを追求する姿勢は何も変わっていない。