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90年代にカリスマ的人気を博した、清春(Vo)と人時(B)によるロックバンド。ヴィジュアル系バンドとして出発したバンドだが、作品のリリースを重ねるごとに激しく音楽性や見た目を変化させていった。特に中期〜後期での、音楽業界やアーティストを痛烈に批判する風刺の効いた歌詞、パンキッシュな音楽性がこのバンドの印象として残っている人も多いはず。

Discography

1994
迷える百合達 ~Romance of Scarlet~ 1st
1994
Cruel 2nd (mini)
1995
feminism 3rd
1996
FAKE STAR ~I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~ 4th
1997
Drug Treatment 5th
1998
CORKSCREW 6th
FAKE STAR ~I'm just a japanese fake rocker~
FAKE STAR
1.Noise Low3
2.FAKE STAR
3.BEAMS(FAKE STAR VERSION)
4.BARTER
5.SE I "SUNNY'S VOICE"
6.SEE YOU(FAKE STAR VERSION)
7.REASON OF MY SELF
8.SE II
9.SEX SYMBOL
10.Cool Girl
11.S.O.S
12.SE III
13.HYSTERIA'S
14.ピストル(FAKE STAR VERSION)
15.
16.「H・L・M」is ORIGINAL
17.SE IV "EITHER SIDE"
96年発表
黒夢の4thアルバム。メンバー自ら"売れ線狙いのナンバー"と位置付けてリリースした名曲Bを収録。他にも卒業をテーマにしたEのようなポップなシングルもリリースするなど、表向きでは大衆受けのポップな音楽性へシフトしたように見えたこの時期。しかしそれと相反するように、棘を鋭く生やし始めた清春の歌詞と、彼の言葉に説得力を増させるサウンドの攻撃力。それはまるでポップな仮面に真実の顔を隠しているかのようである。おかげで、彼ら自らがBでポップを体現したことが当時の音楽シーンへの皮肉にも聞こえてしまい、これは彼らの計算通りといったところなのかもしれない。

今回の作品は、いくつかの曲の合間にSEトラックを挟み、複数のプロットを重ねたような構図になっている。清春曰くこのSEの効果は、リスナーに場面転換や小休止を期待してのこと。
今作の刺々しさを体現するタイトルトラックAは一番の目玉だが、個人的には次に続くBCがとても素晴らしく感じた。それぞれが全く違う空気を放っていながら隣り合わせに並んでいるこの二曲は、聴くほどに味が出てくる。ピコピコした電子音をバックに暴力的に疾走するCは特にお気に入り。他にも情緒的で繊細さが際立つLは、美意識の高さも感じられる名曲。シングルとして出された、サビのフレーズが印象的なMは、SEの音が大きくなっている。このように電子音などの音響効果を全体に存分に生かされていることにも注目したい。

本作から音楽シーンにかみつき始めた黒夢。本作以降の作品はキレぎみで、且つパワフルで禍々しいオーラを放っているため、バンドはポップとは無縁の存在になっていく。もっとも、それが黒夢らしい姿なのかもしれないが、あれこれと模索しながらも様々な音楽性に染められたこの作品にも是非とも触れておきたい。バンドの以前と以降の雰囲気の両方を味わえる、黒夢にとって大きなターニングポイントとなった作品。