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Information

近年のガレージロックの再評価がもたらしたロック回帰の現象、所謂ガレージロックリバイバル。オーストラリアはシドニー出身のThe Vinesもまた、その一員とされるバンドである。

メディアは彼らのサウンドを語る際、よく「Beatlesに出会ったNirvana」というキャッチコピーがつけるが、それはクレイグ・ニコルズ(Vo/G)の情緒不安定な心を表しているのかも知れない。甘いマスクに似合わず、狂ったように咆哮し、必死にギターを掻き毟るさまは、まさにカートコバーンそのもの。それに加え、ブリティッシュロックの恩恵を受けた暖かいサウンドも聴かせるのだから、本当に起伏の激しいバンドである。

クレイグは、プライベートやテレビ出演でも奇行が多く、特に日本でライブを行った際に日本を侮辱したりなど、話題に事欠かない。後に彼はアスペルガー症候群と医者に宣告され、精神の不安定さは歴とした病気だったことが明らかとなるのであった。

Discography

2002
Highly Evolved 1st
2004
Winning Days 2nd
2006
Vision Valley 3rd
2008
Melodia 4th
Highly Evolved
Highly Evolved
1.Highly Evolved
2.Autumn Shade
3.Outtathaway
4.Sunshinin'
5.Homesick
6.Get Free
7.Country Yard
8.Factory
9.In the Jungle
10.Mary Jane
11.Ain't No Room
12.1969
13.Sun Child (Demo) *
02年発表
The Vinesの1stアルバム。暴力性と繊細さを持ち合わせていることから、しばしば「ビートルズmeetsニルヴァーナ」と語られる彼ら。特に代表曲Eでのシンプルで荒々しい演奏と、繊細なメロディを主軸に優しく歌い上げるDを合わせて聴くと、本当に同じ心情を持った人間が歌っているのかと疑ってしまう。それほどクレイグの脳内にははいろんな感情が渦巻いており、整理することが出来なかったのだろう。ただ、コレこそがヴァインズの真骨頂。感情の二面性を大胆に表現したことでアルバムを通して情緒不安定さが出来上がり、これがリスナーの感情を大きく揺さぶるのである。

背中をさするかのように丁寧に歌い上げる曲があるだけに、相手に噛み付くような形相で歌うBやEにはいろんな意味で驚かされる。ギターのノイジー具合やクレイグのヴォーカルからはカートを感じずにはいられない。さらに、跳ねるようなリズムとサウンドが織り成すポップなGを聴けば、ますますアルバムの全体像が分からなくなる。まぁ、それが良いのだけれども。ラストのKは、ザクザクした穏やかなリフと、長く伸びるクレイグの叫び声がとてもインパクト大である。

ガレージロックリバイバルの煽りなのか独特の世界観が注目されたのか、デビュー作にして早くもヒットを記録した作品。クレイグの変化に富んだ感情と、耳に残るサウンドを十二分に詰め込んだこのアルバムは、彼らの代表作となっている。因みにジャケットデザインは、クレイグ自ら手がけたとか。
Vision Valley
1.Anysound
2.Nothin's Comin'
3.Candy Daze
4.Vision Valley
5.Don't Listen To The Radio
6.Gross Out
7.Take Me Back
8.Going Gone
9.Fuck Yeh
10.Futuretarded
11.Dope Train
12.Atmos
13.Spaceship
06年発表
 The Vinesの3rdアルバム。おそらく本作を聴いた人が真っ先に感じるのは、曲の作りがとてもあっさりしている、ということだろう。その簡素な作りは徹底していて、黒いジャケットやモノクロのPVなどにもそれは表れている。とにかく本作を取り巻くものがとことんまであっさりしていて、まるでリスナーに深入りされるのを拒んでいるかのようにも感じられる。もしくは、部分的に良いメロディが沢山浮かび、それらを活かすには単純な作りがベストだと考えてのことなのかもしれない。

 まず、収録時間が約32分と非常に短く、一曲一曲が一分〜二分の曲ばかり。1stで感じた、クレイグの精神不安定さがもたらす危険なサウンドは減ってしまったが、口ずさみやすい楽曲の良さも手伝い、非常に聴きやすい作品に仕上がっている。全体的に穏やかなギターロックが多くて曲の振れ幅はそれほど感じず、スピーディーにアルバムは流れていくが、その波はとても優しい。中でもアコースティックなサウンドの4#「Vision Valley」、8#「Going Gone」はヴァインズの曲の中でも特に美しい。もちろん6#「Gross Out」や、9#「Fuck Yeh」のように、噛み付くような荒々しさを持った曲もあるが、今回は口ずさみやすいギターロックとスローテンポの曲が印象的だった。

 バンドは、デビュー作で早々に注目を浴びてしまったがために、以降の作品を作るにあたり過度のプレッシャーを感じただろうし、クレイグの病のこともあってバンドも存続が危うい状況であった。想像するに、彼らは前作の2ndで早くもマンネリを感じて、今回新たにこのような作風になったのかもしれない。本作に深みや斬新なサウンドは無いけれど、ギターロックのかっこ良さと鮮やかさをリスナーに叩きこませるには十分のアルバムだ。