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80年代後半にイギリスから現れたバンド。デビュー間もない頃はガレージパンクやサイケデリックなサウンドで魅了していたが、91年に発表した傑作『Screamadelica』で一変。当時ブームだったアシッドハウスの要素を大きく取り入れたこの作品で一気に知名度があがる。そこから世界的なロックバンドとして名を馳せていくことになる。

時代の最先端の音を鳴らすために常にサウンドを変えていく、その様はまるでカメレオン。そしてこの音楽に対する貪欲な姿勢こそがロックなのではないだろうか。

Discography

1987
Sonic Flower Groove 1st
1989
Primal Scream 2nd
1991
Screamadelica 3rd
1994
Give Out But Don't Give Up 4th
1997
Vanishing Point 5th
1997
Echo Dek remix
2000
Xtrmntr 6th
2002
Evil Heat 7th
2006
Riot City Blues 8th
Screamadelica
Screamadelica
1.Movin' on Up
2.Slip Inside This House
3.Don't Fight It, Feel It
4.Higher Than the Sun
5.
Inner Flight
6.Come Together
7.Loaded
8.Damaged
9.I'm Comin' Down
10.Higher Than the Sun [A Dub Symphony in Two Parts]
11.Shine Like Stars
91年発表
Primal Screamの3rdアルバムにして大出世作。アシッドハウスがブームだったこの時代に勝負をした、という感じだろうか。今では、ハウスといえばこのアルバムというくらい知名度も評価も非常に高い。

民族音楽とダンスサウンドを融合させたような不思議な音楽空間。なんだこれは。個人的には、これがバンドの出すサウンドなのか?と敬遠しがちなアルバムでもある。個人的にはヒット曲の@と10分を超える大曲Eが大好き。どれも細かい効果音やメロディが癖になる。
Vanishing Point
1.Burning Wheel
2.Get Duffy
3.Kowalski
4.Star
5.If They Move, Kill 'Em
6.Out of the Void
7.Stuka
8.Medication
9.Motorhead
10.Trainspotting
11.Long Life
97年発表
 Primal Screamの5thアルバム。本作の後に、傑作「XTMNTR」「Evil Heat」と、無機質で機械的な印象を与える作品が続くが、それらと繋がりのようなものを感じさせる本作。以前まで(特に2nd~4th)は、その作風の変貌っぷりに、繋がりなどあったものではなかったが、本作から「Evil Heat」辺りの三作は、まるで兄弟のような親密感がある。本作から、ストーン・ローゼズのマニが加入し、次作ではMBVのケビン・シールズが加わるのだが、彼の魅力があまりにも大きかったのだろう。推測するにこの三作、彼の魅力を活かすための作風のようにも思えてくる。

 前作ではクラシカルなロックを披露したが、本作ではミキシングを多用し、スタジオに篭って作られた空気が漂っている。いわゆるダブステップがフィーチャーされた作品で、バンドサウンドや打ち込みを初め、様々な音が曲の中で飛び交う。予測不能な曲展開ながらも、強調されたリズムセクションが心地良く、彼らならではのメロディも介入。コミカルさを装いながらも、ダブ特有のクールさが際立った仕上がりとなっている。 このクールにまとめてくるセンスが個人的に大好きで、そういった意味では本作を極めたような次作「XTMNTR」の素晴らしさは言うまでもない。

 キラーチューンと言える曲が無い上に、淡々としたテンションでトラックが進んでいくため、本作の存在感や人気は、他と比べると低い。しかし、カメレオンバンドの名に違わぬ、大胆な色変化(作風チェンジ)を器用にやり遂げ、センスの高い彼らの音楽性の一端をみせつけた、バランスのとれた名作といえるだろう。
Xtrmntr
Xtrmntr
1.Kill all hippies
2.Accelerator
3.Exterminator
4.Swastika Eyes
5.Pills
6.Blood Money
7.Keep your dreams
8.Insect royalty
9.Mbv Arkestra
10.I'm five years ahead of my time
11.Swastika eyes (Chemical Brothers mix)
12.Shoot speed/kill light
00年発表
傑作Screamadelicaと同じか、それ以上の出来とも言われるこのアルバム。初期の作品にあった陽気さはほとんどなく、ひたすら攻撃的なサウンドが続く作品である。ギターのノイズ、ベース、ドラムの迫力にとても圧倒される。ギターのノイズに関してはMy Bloody Valentineのケヴィン・シールズが大きくかかわっている(この作品からこのバンドに参加している)。

…にしてもどの曲もめちゃくちゃカッコいい。ヒット曲C、インスト曲Eのドラムとベースのカッコよさは何て表現したら良いのか。憂鬱な雰囲気が特徴的なD、重たいサウンドが疾走していくようなKもたまらない。個人的には、この作品こそ彼らの最高傑作だと思っている。