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Information

通称「東洋のテクノ・ゴット」。石野卓球と並び、世界に数多くのファンを抱える、日本が世界に誇るテクノアーティスト。

Discography

1993
Garden On The Palm mini
1994
Inner Elements Compilations
1994
Reference To Difference
1995
Jelly Tones
1995
Green Times
1996
Grip
1996
Re Grip remix
1997
Metal Blue America
1999
Sleeping Madness
2000
Flatspin
2002
Future In Light
2005
Play, Pause and Play mix
2006
Sunriser
2008
Daybreak Reprise -SUNRISER Remixed- remix
Sunriser
1.Sunriser
2.Let It All Ride
3.Organised Green
4.Mars Buggies
5.Time Flies
6.Beam Skywards

7.Perfect Memory
8.Reflexion
9.Free Energy
10.The Rescue
11.Cubitos de Hielo
06年発表
 Future In Light以来、約四年ぶりのリリースとなったオリジナルアルバム。デトロイト・テクノのスタイルを軸に、本作は"王道"とも言えるテクノ・クラブサウンドを構築。風のように吹き抜けるシンセの心地よさ、4つ打ちで止めを刺す楽曲の構成。そしてカラフルで明るい音色をふんだんに使ったサウンド。表現の幅が尋常ではない電子音楽というジャンルで、"これぞテクノ"といったサウンドを本作で感じることが出来る。電脳空間に飛び込んだような、宇宙に飛び立ったような。多くの人が思うであろう、テクノに感じる印象そのままのサウンドが飛び込んでくるはずだ。なんといっても、ライブハウスでVJとなって客を縦ノリさせるKen Ishiiの姿が目に浮かぶ。

 本作を製作するにあたっては、世界を巡って行なってきたDJツアーで感じたことが少なからず影響したという。Ken Ishiiは、各地を飛び回って行ったツアーの中で、テクノシーンに今ひとつ元気がないことを認識。その危惧から、しっかりとしたテクノ(おそらく"王道"であり"本来の姿"という意味だろう)をつくろうという思いが生まれ、これが本作を制作する根幹となったと言える。極めつけは「テクノをこのアルバムでやり切ろうと思った。」という彼の言葉。テクノアーティストKen Ishiiのアイデア、使命感、キャリアが極まった中でリリースされた、いわゆる集大成的な作品と言うことが出来るだろう。

 テクノしすぎてるせいか本作を初めて聴いた印象は、電子音楽をかじった程度の自分にはとても味が濃く、思わず一歩引いてしまった。しかし次第に病みつきになり、同時に、いまいちはまりきれなかったテクノ・クラブサウンドの世界を深く知りたくなった。緻密に組み合わさったサウンドと曲構成、空間を広く感じさせる爽やかなシンセの音、踊れる要素を持ったクラブサウンド独特の心地よさ・・・。Ken Ishiiの代表作としては勿論、テクノ入門にももってこいの作品。この作品が好きになれれば、海洋のごとく広がった電子音楽の世界をより一層楽しめるようになると思う。