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80年代中期から90年代後期に渡って活動していたアメリカのミクスチャーバンド。メタルよりのファンクロックを得意とするが、基本的にその音楽性は多種多様。自由奔放に多くのジャンルを横断し、後期にはドリーミーな音楽性も披露した。バンドの自由さを物語るマイク・パットンの、奇人の異名を取るほどのヴォーカルが大きな特徴だ。

Discography

1985
We Care a Lot 1st
1987
Introduce Yourself 2nd
1989
The Real Thing 3rd
1992
Angel Dust 4th
1995
King for a Day Fool for a Lifetime 5th
1997
Album of the Year 6th
Angel Dust
Angel Dust
1.Land of Sunshine
2.Caffeine
3.Midlife Crisis
4.RV
5.Smaller And Smaller
6.Everything's Ruined
7.Malpractice
8.Kindergarten
9.Be Aggressive
10.A Small Victory
11.Crack Hitler
12.Jizzlobber
13.Midnight Cowboy
14.Easy *
15.As the Worm Turns *
92年発表
 FNMの4thアルバム。ミクスチャーと区分されるバンドの中でも、最も強烈な個性を放つグループではないだろうか。このバンドはメタルを下敷きに、多方面から音楽性やサウンドなどを取り込み、曲ごとに見事なほどバラバラな音楽性を持つ。にも関わらずこのアルバムにおいては、非常に良くまとまっている印象をうける。バラエティ豊かというのは、乱雑になりがちなのが玉にキズだが、本作はそれを感じさせないのである。本作が評価されている部分はおそらくそこなのだと思う。もちろん一箇所のテリトリーで落ち着いているわけもなく、ノーテンキにはっちゃけ、静まり返り、激昂したりと忙しなく暴れ、バンドの個性と魅力を高い濃度で煮詰めた内容となっている。

 本作においては特にそれぞれの楽曲の個性が強いにもかかわらず、まとまりがあるのは、個々の楽曲のクオリティの高さに他ならない。気の緩みがどこにもない緊張感がそれを裏付けており、つまるところ、余計な音や楽曲が極力排除された結果なのだろうか。そしてなんといっても個々の演奏が作り出すサウンドの魅力によるところも大きい。ずっしりと重いギターリフにスラップベース、骨太な音を叩き出すドラム、そしてマイク・パットンの変態的と評されるヴォーカル。そんな彼らの魅力が最も味わえるのが、おそらくこの作品なのである。

 …にしても、やっぱりマイク・パットンのヴォーカルはいろんな意味で衝撃的。激昂やダンディズム、ラップなどを織りまぜた、彼の声は必聴に値する。余談だが、メンバーは自分たちのサウンドを、「ラップメタル」と称したというが、後のラップメタルとは比べ物にならないほど強烈な個性を放つFNM。この骨太で実験的で変態的な名作は是非とも耳にして欲しい。本作は90年代の名盤の一つである。
King for a Day Fool for a Lifetime
King for a Day Fool for a Lifetime
1.Get Out
2.Ricochet
3.Evidence
4.The Gentle Art Of Making Enemies
5.Star A.D.
6.Cuckoo For Caca
7.Caralho Voador
8.Ugly In The Morning
9.Digging The Grave
10.Take This Bottle
11.King For A Day
12.What A Day
13.The Last To Know
14.Just A Man
95年発表
 FNMの5thアルバム。前作によって高い評価を受け、バンドの地位を確固なものにした彼らだが、93年にギタリストのジム・マーティンが脱退してしまう。その代わりに加入したのが、マイク・パットンの別バンドでもあり、FNM以上に奇天烈なバンド、ミスターバングルのギタリスト。彼の加入が影響したのか、猛進するヘヴィな楽曲と、穏やかな曲の対比が強くなり、振り幅の大きさを特に感じた作品。それを意識させるのが、なんといってもAからBの流れなのだが、これはFNM史上最も印象的且つ素晴らしい展開だと思っている。ヘヴィロックで縦ノリをかました後、本格的なジャズを披露するバンドはそうそういないだろう。

 やはり楽曲のバラエティ性が富むと、マイク・パットンのヴォーカルもそれに比例するように、より変化自在になっていくようだ。Eは白目で歌ってる顔が想像出来るほどの超絶な絶叫を堪能できる他、一方ではジャジーな楽曲(BF)を味のある深い声で丁寧に歌い上げる。・・・等々、惜しげもなく披露される彼の多彩なヴォーカルセンスに度肝を抜かれてしまう。音や曲のアレンジに関しても、曲内での極端な転調はもはや当たり前。曲間の流れを無視したような我の強い個々の楽曲は、彼らのサウンドイメージを大げさなくらいに体現している。このミクスチャー具合は、ある意味では最もFNMらしいサウンドなのかもしれない。

 前作に比べると緊張感は薄れ、むしろ楽曲の勢いや音を楽しむような空気が感じられる。そこもFNMらしい(?)。そのため前作とは印象は異なるものの、今作も間違いなく名作。とりあえず、親しみやすいABの名曲群を聴いてほしい。