コラム > 第7回 Chapterhouse / Ulrich Schnauss, Live in LIQUIDROOM [4/6]
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90年代初期に巻き起こったシューゲイザーブームの渦中でその存在感を一際輝かせ、十数年たった今でもブームを語る際に避けて通れないバンド、チャプターハウス。マイブラなどと共にブームを形成した彼らが約18年の時を経て日本にやってきた。一昨年にとあるイベントをきっかけに再結成を果たしたという彼らは、今回のライブを皮切りに本格的に活動を再開するそうだ。そして今回はロンドン公演にも付き添ったUlrich Schnaussも揃って来日参加。そして特別ゲストにFleeting Joysを加えた、シューゲイザーファンにはたまらない組み合わせの公演となった。


18:00開場 / 19:00公演開始

会場は、恵比寿にあるライブハウスLIQUID ROOM。講演開始の15分前に会場に到着し、二階にある物販に目を通してからいざ会場入り。因みにグッズとして売っていたのは「Whirlpool」ジャケットのネコがプリントされたTシャツ、再結成後のツアーを撮影したしたライブDVD(500枚限定)などなど・・・。

余談だが、受付前のロビーでの喫煙率が半端じゃなく多くて、煙で辺りが靄がかかっていたほど。タバコを吸わない私は、その場にいるのがほんとに苦して、目も痛くなり終始涙目になる始末。人目を憚らずタバコ吸う人ってどうなの? せっかく来たのテンション下がっちゃったよ。

会場の収容人数は 1000人ほどらしいが、半分以上は埋まっていたから600~700人位は入っていたのかな?思ったより人が詰め掛けていて驚いたのを覚えている。オールスタンディングの会場で、手前の低いフロアとそれを囲むフロアで構成されていて、私は手前の低いフロアの後方でスタンバイ。

公演はFleeting JoysUlrich SchnaussChapterhouse の順で行われた。

Fleeting Joys

ライブ開始とともに夫婦によるシューゲイザーユニット、Fleeting Joysが登場。彼らはマイブラに最も近いサウンドを鳴らすバンドということは知っていたため、ある程度の轟音でライブが行われることは予想していたが、とてつもなかった。始まった途端ギターを掻き鳴らし、たちまち会場を音の塊で覆っていく様は圧巻だった。お客さんも動きは大きくなかったが、さっそく音の洪水に飲まれる感覚を心地よく味わっていたようだった。とにかくけたたましくサウンドを鳴らし続けるライブだったが、フィードバックノイズや、もはや何を言っているのか分からないヴォーカルなど、シューゲイザーを生身で味わっている感覚に酔いしれ、耳が痛くなりながらも半ば感動気味だった。ステージのバックにはドリーミーな映像(?)が流れていたためか、より妖しく甘い雰囲気を醸し出していた。ギュワーーンというギターノイズを繰り返す曲では、お客さんはそれに合わせて大きく体を揺らすなど、オーディエンスをしっかりと取り込んでいたのも印象的だ。個人的に彼らだけでお腹いっぱいになりそうになっていた(笑)。
あと演奏の合間にステージの二人が耳打ちをしている姿が微笑ましく、それを冷やかす声も上がったりと、暖かい雰囲気のライブ内容だった。

Ulrich Schnauss

Fleeting Joysが終わり、Ulrich Schnaussのライブの準備が行われる。様々な音響機材を本人自らステージを歩き回りながら配置し、しばらくしてからライブが始まる。髪が長い割に頭の毛が薄い、というのはあくまで写真のイメージ(笑)。当日はかなり短く切りそろえられていました。 ステージのバックに西洋の街並や絶景が流れ、会場全体をトリップさせようとする。そこに心地よい電子音が鳴り響き、音量の大きいノイズが加わっていく。Ulrichの場合は轟音というより、甲高いノイズで耳がやられそうだった。椅子に座り黙々と音を奏で続け、時々背を向けて軽くドラムを叩き、本人が思い描く世界を作り上げていく。オーディエンスもその壮大な世界に圧倒され、引き込まれていった。Ulrichの演奏は曲間をつなげ、ブランクを殆ど作ること無くぶっ続けで最後まで走り抜けた。エレクトロニカによるお淑やかなライブかと思いきや、フィードバックノイズ多用した非常に神々しいライブとなった。正直ちょっと眠くなってしまったが・・・(笑)

Chapterhouse

Ulrich Schnauss終了後はみんなのお待ちかね、チャプターハウスのライブ。ベースを除く、往年のオリジナルメンバーがステージに登場したとたん、たちまち会場は大盛り上がり。なんとも現実味の薄い感じだったが、彼らは確かにそこにいた。三人がギターを抱えるスタイルは相変わらずで、内一人がキャップ帽を深くかぶり、二人はヴォーカルを兼任する。あとドラマーがメタルバンドにいそうな、もっさい髪型とヒゲを蓄えていたのもまた一興。とにかくオーラ出しまくりの彼らの演奏を心待ちにする声援が鳴り響く中、ライブは始まった。

美しい音を紡ぎ出すギターと轟音を黙々と掻き鳴らすギター。無表情で歌い合う二人のヴォーカル、骨太なドラミングどれもがチャプターハウスを形成し、私は口が半開きのまま聴き入った。「Whirlpool」収録の曲が始まると、悲鳴にも似た声援が飛び交い大いに盛り上がった。 二曲目でTreasureを演奏し、次にFalling Downを持ってくる、まさに名曲のオンパレード。霧のような轟音とは程遠い、凄くパワフルな轟音を聞かせ、本人たちもノリノリだったのか、ギターを激しく掻き鳴らすところで体を大きくゆする一面も見せてくれた。もちろん会場も激しくうねりを見せコーラス部分は口ずさまずに入られない。疾走感あふれる爽やかなBreatherはとにかく声援が絶えず、アーティストとオーディエンスの熱気が最高潮に達した曲といえよう。もちろんバンドはクールを装っていたが(笑)。 ラストの一つ前にようやく待ちに待ったPearlが始まった。前奏が始まり思わず胸が高鳴る。この名曲を聞きに今日は来たと言っても過言ではない。まさか当人の演奏が聞けるなんて夢にも思っていなかったものだから。ステージ端から女性ヴォーカルの方が登場し、印象的なあのコーラスを奏でる。後半をちょっと引き伸ばし長い余韻を持たせて名曲が通り過ぎた。いやー素晴らしい!そして「Blood Music」からもいくつか曲を持ってきてくれた。大好きなGreater Powerを演奏してくれて大感激。ラストには名曲Love Foreverを演奏。この時は女性ヴォーカルの方とUlrichもさりげなく登場し、大所帯となりながらサウンドに奥行きを持たせ、美しい音色を重ねた壮大な演奏を聴かせてくれた。ちなみにロンドン公演ではダウンな演奏だったそうだが、今回は音源通りテンポの良いドラミングの入る演奏を披露。

Love Foreverが終わり、メンバーが「Thank You」とつぶやき、歓声に見送られながら舞台の袖に全員が姿を消すが、しかし歓声は鳴り止まず、会場はアンコールに包まれる。しばらくするとそれに答えるべくメンバーがステージに戻ってきた。曲は「Whirlpool」収録のIf You Want Me。後半にホワイトノイズに包まれる、これまた名曲である。この曲を目に焼き付けるよう見守り、バンドは噛み締めるように演奏していく。轟音をかき鳴らしている間、オーディエンスはもみくちゃになるように踊り狂う。その後最後にもう一曲演奏するとほんとの終りを迎えたのであった。

*演奏リスト*
Ecstasy / Treasure / Falling Down / Greater Power / Something More / April / Then We'll Rise / Precious One / Rain / Autosleeper / Breather / Come Heaven / In My Arms / Pearl / Love Forever

(encore) If You Want Me / Inside of Me

感想

前座の二組も素晴らしかったですが、Chapterhouseはとにかく神々しかった。なんだか歴史的瞬間に立会った気持ちになりながら見てました。心残りをあえて上げるなら「Guilt」「Summers Gone」の二曲が聴けなかったことかなあ。これらの曲は特に好きだっただけに生で聞きたかったけど・・・ちょっと残念だったなあ。でもライブ中はそんなことお構いなしに轟音ですっ飛ばしてくれたし、包み込んでもくれた。ジャンルの秘めたる力をオーディエンスの体に焼き付けた素晴らしいライブだったと思います。こんな貴重なライブに行けてとても満足です。

過去の英雄が再始動してくれると言うのはとてもうれしいこと。マイブラの来日同様、活動再開したというだけでも、シーンへの影響力は絶大。ますますシーンは活性化されていくことでしょう。楽しみです。