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 イギリスのニューウェイブ期である80年代にデビューしたCocteau Twins。とにかくこのバンドは、同時期に活躍した他のバンドと比べるとかなり独特の雰囲気を醸し出していたように思えます。静謐で、どこまでも上品で繊細なサウンド。"荘厳"とも言うべきその美しい世界観はどの作品でも一貫しており、それは後続のアーティストに多大な影響を与えています。おそらく耽美系バンドの先駆けなのでしょう。

 このバンドの魅力を最大限に引き出しているのは、エリザベス・フレイザーによるヴォーカル。オペラ歌手のような歌いまわしや、消えてしまいそうな嘆き声の組み合わせが、天上界の天使を思わせる…。

 1st「Garlands」こそJoy Divisionを引き合いに出されるくらい暗くて不気味な妖しさを持っていましたが、以降はコンセプトを変えつつも、どれも美しく素晴らしい作品をリリースしていきました。

Discography

1982
Garlands 1st
1983
Head over Heels 2nd
1984
Treasure 3rd
1986
Victorialand 4th
1988
Blue Bell Knoll 5th
1990
Heaven or Las Vegas 6th
1993
Four-Calendar Cafe 7th
1996
Milk and Kisses 8th

Treasure
Treasure
1.Ivo
2.Lorelei
3.Beatrix
4.Persephone
5.Pandora
6.Amelia
7.
Aloysius
8.Cicely
9.Otterley
10.Donimo
84年発表
 Cocteau Twinsの3rdアルバム。デビュー時は重苦しい音楽性を身に纏っていたバンドだったが、前作からその雰囲気を徐々に振りほどき、初期の傑作であるこの作品にてついに解放した。今までになく気持ちよさそうに歌うエリザベスの高らかなヴォーカルと、月夜を映し出すほどに美しいギターサウンドとのハーモニー。荘厳とか、神々しいだとか、耽美な音楽というのはまさにこれを指すのだろう。天上界というものが存在するのなら、おそらくこの作品が作り出した世界かもしれない。それほどに静謐で美しいアルバムである。

 個人的にエリザベスの劇的に生まれ変わったヴォーカルと、バンドの目指している耽美な音楽性が、早くも合致した作品だと感じた。このバンドをココまで耽美追求に駆り立てたモノは何なのだろう…。その美しさは、深夜の教会に差し込む月の光のようでもあり、…何度も言うようにとても神秘的で美しい。名曲Aは囁くヴォーカルと鐘のような音色の綺麗さに思わずうっとりしてしまい、Dは流麗で儚いギターの音色がとても心地良い。深夜に部屋の灯りを消して聴くとすごくハマリそうな気がする。どのサウンドもとにかく美しいが、初期の妖しさが残っているこの雰囲気もまた良しということか。

 この作品が今後のコクトーツインズの音楽性を決定付けたと言っても過言ではなく、バンドの代表作の一つともなっている。とにかくサウンドメイクの細かさと世界観、雰囲気がたまらない作品であった。
Victorialand
1.Lazy Calm
2.Fluffy Tufts
3.Throughout the Dark Months of April and May
4.Whales Tails
5.Oomingmak
6.Little Spacey
7.
Feet-Like Fins
8.How to Bring a Blush to the Snow
9.The Thinner the Air
84年発表
 Cocteau Twinsの4thアルバム。傑作「Treasure」の次作にあたる作品で、今作も前作同様、荘厳さを突き詰めたようなサウンドが展開されている。エリザベス・フレイザーの声といい、月夜に照らされたガラス細工のようなギターの音色といい、天上界から響き渡るようなサウンドメイクには相変わらずうっとりとさせられてしまう。

  本作の特徴としては、ドラムが全くと言っていいほど取り入れられていないこと。これが、より非現実的で近寄り難い厳かな雰囲気を創りあげているように思う。メロディの湖を漂うかのような雰囲気は、息を飲むほどに幻想的で穏やか。かつ抑揚をほとんどつけずに、アルバム全体で一定の流れを保っている。おそらくCocteau Twinsの作品で最も統一感のある作品で、とてもあっさりと聴けるアルバム。・・・とはいえ、思い切ったサウンドの変化をしなかったバンド(良い意味で)なので、その違いは微々たるものだが、寝静まった宵に溶けこんでいく雰囲気は、本作が圧倒的。思えば歌声もとても繊細に響いており、張り上げたようなヴォーカルはほとんど無い。

 個人的に#1「Lazy Calm」のイントロが特にお気に入りで、静寂から生まれたような繊細な音色に聞き惚れる。他にも、深い闇を感じさせる、物哀しい#4「Whales Tails」も素晴らしい。前作のように目立った名曲は無いが、アルバムを通してとても調和のとれたアルバムである。