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 二人組のテクノ・エレクトロニカユニット。90年代後期のメジャーデビューを皮切りに脚光を浴びたが、そのキャリアは意外と長く、それは87年にまで遡る。

 98年にテクノのトップレーベルである"ワープ"からファン待望の1stアルバムをリリースし、ブレイクを果たした。それ以降も完成度の高い作品を世に送り出しており、現在のアンビエント・エレクトロニカシーンの顔とも言える存在となった。

Discography

1998
Music Has the Right to Children 1st
2002
Geogaddi 2nd
2005
The Campfire Headphase 3rd

The Campfire Headphase
1.Into The Rainbow Vein
2.Chromakey Dreamcoat
3.Satellite Snthem Icarus
4.Peacock Tail
5.Dayvan Cowboy
6.A Moment Of Clarity
7.'84 Pontiac Dream
8.Sherbet Head
9.Oscar See Through Red Eye
10.Ataronchronon
11.Hey Saturday Sun
12.Constants Are Changing
13.Slow This Bird Down
14.Tears From The Compound Eye
15.Farewell Fire
05年発表
 BOCの3rdアルバム。前作から約三年ぶりに発表された作品。ブレイクビーツを始め、目の覚めるようなサウンドも織り交ぜていた過去作と比べると、雲を掴むかのような音像で我々を浮遊感のある世界へと誘う今回の作品。サウンドに浸っていると、打ち寄せる波を眺めているような脱力感を覚えるのみで、意識が遠のいていくのを感じる。細かい音を重ねあわせた幻想的なメロディは、辺りを包み込むように鳴り渡っていくのが印象的。BOCの中でも、とりわけ浮遊感が強調され、奇を衒った音が少ない作品である。

 一歩一歩踏みしめるようなパーカッション、ギターの音やさざ波などのサンプリング音が取り入れられながらも、電子音と生音との調和が取れていて、とても神秘的に仕上がっている。ビートもしっとりと心地良い上、穏やかに進行していくトラック群。薄く白いベールで覆うように、神経質なメロディが重なり合う美しさ。心地良いエレクトロミュージック言ってしまえばそれまでだが、紋切り型のエレクトロニカとは、アプローチが大きく異なっていることが想像出来る。派手さは無くとも、計算しつくされた音の配置に安心感さえ覚えてしまうだろう。この作品を聴きながら、絶景や感情などにどっぷりと思いを馳せたい。

 地味ながら印象に残ったのが最後の二曲。青白い火が段々と小さくなるように、音もまた儚く響きながら消えていくのである。陳腐な表現で言えば、世界が終焉に向かっている感じ。人っ子ひとりいる感じがしない。しかし、それが心地良くてたまらない・・・。ラストに相応しい曲である。統一感バッチリのその他の楽曲も見事で、聴くごとに深みが増す素晴らしいサウンド達。心地良さと美しさ、浮遊感が想像力を膨らませる、BOCの名作である。